大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和28年(し)76号 決定 1953年12月25日

主文

本件特別抗告を棄却する。

理由

頭書記載の申立人上田誠吉外一四名の特別抗告申立の理由について、

被告人吉田実雄外三一名に対する騒擾助勢等被告事件記録中の同裁判所刑事第一一部昭和二八年九月二二日の公判調書によれば、同日の公判期日において同部裁判長が法廷警察権の行使として所論のような各退廷命令をしたところ、弁護人等から異議の申立があり、同裁判長は刑訴法第二八八条第二項に基く、法廷の秩序を維持するための裁判長の処分は、同法第三〇九条第二項の「裁判長の処分」には含まれないから右異義申立は不適法として、却下する旨の決定を宣告した事実を認めることができる。よって按ずるに、所論前段は原決定が、刑訴二八八条第二項所定の「裁判長の処分」は、同法三〇九条第二項所定の「裁判長の処分」に含まれないとした点において法令の解釈に誤りありとするものであって、論旨は違憲を主張するけれども、その実質は刑訴法の解釈の当否を争うものであって、特別抗告の適法な理由とならない。また右刑訴訟法の解釈に誤りがあったからといって原決定を公平な裁判所の裁判でないとはいえないことは屡々当裁判所大法廷の判例とするところである。

論旨後段は、憲法の保障する公開裁判の原則に反すると主張するけれども、所論裁判長の命令は、要するに法廷における被告人、傍聴人に対して、拍手等法廷秩序の妨害となるがごとき所為をなさざるよう予め注意を喚起するの趣旨に出でたもので、もとより当然の事理に属するところであって被告人らが右の命令に反する所為をしないかぎり、その在廷を拒まれるものでないことは、その命令の内容自体から、極めて明白であって、右の命令を以て公開の原則に反するとの論旨は、畢竟右命令の曲解を前提とするものであって、また特別抗告の適法な理由とすることはできない。

よって、刑訴法第四三四条第四二六条第一項に則り裁判官全員一致の意見により主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例